国土利用計画法
- 建士先生
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宅建試験では、毎年1問出題されています。
ただ、近年の宅建試験では、肢の一つとしてその他の法令上の制限の法律とともに、出題されるようになっています。国土利用計画法はとても簡単なので、完璧にしておきましょう。
もくじ
国土利用計画法とは
国土利用計画法とは、国土利用計画の策定に関し必要な事項について定めるとともに、土地利用基本計画の作成、土地取引の規制に関する措置その他土地利用を調整するための措置を講ずることにより、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的として制定された法律です。
日本の国土は限られています、そのためその利用において、有効に利用する必要があるのです。そのような大切な資源である土地がお金儲けの手段となり、異常な値上がりをすることがあると有効に土地利用ができなくなってしまします。そこで、地価の異常な上昇を抑制する法律が国土利用計画法なのです。
国土利用計画法の仕組み 許可制・届出制
国土利用計画法では、一定の土地取引にたいして、許可制と届出制により地価の上昇を抑制しようとするものです。
許可、届出は区域によって異なります。
地価の急激な上昇の可能性が高い順に規制区域、監視区域、注視区域が定められます。
- 規制区域→許可制
- 監視区域→事前届出
- 注視区域→事前届出
- 区域の指定なし→事後届出
国土利用計画法 土地に関する権利の移転等の許可
都道府県知事は、土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われ、又は行われるおそれがあり、及び地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあると認めらるような区域などについて5年以内の期間を定めて規制区域として指定することができます。
規制区域に指定された場合には、土地に関する所有権、地上権の移転又は設定をする契約(予約を含む)を締結しようとする場合には、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
もし許可を受けずに契約を行った場合はその契約は無効になるとともに罰則の適用を受けることになります。
ただ、宅建試験では、許可制の問題は出ないと言ってもいいでしょう。というのも、今までに規制区域として指定されたことがないからです。ここでは届出制だけでなく許可制もあるんだという知識だけでいいと思います。
国土利用計画法 土地に関する権利の移転等の届出
国土利用計画法では届出制として、注視区域における事前届出、監視区域における事前届出、全国にわたる区域について(規制区域、注視区域、監視区域の指定のない区域)事後届出を設けています。
事後届出制
まずは事後届出制についてです。
注視区域、監視区域、規制区域の指定のない区域について、全国どこにおいても、土地売買等の契約を締結した場合には、権利取得者は、その契約を締結した日から起算して2週間以内に、土地の利用目的、対価の額などをその土地が所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出なければなりません。
土地売買等の契約の範囲について
「土地売買等の契約」は以下の要件を満たすものとされています。
- 権利性
土地に関する権利(所有権、地上権、賃借権など)の移転または設定のことで、これらの要求する予約完結権や買戻権なども含まれます。これに対し、抵当権や地役権、永小作権、質権になどは土地に関する権利にあたりません。抵当権などは土地売買等の契約にあたらないからです。 - 対価性
土地に関する権利の移転又は設定が対価の授受を伴うものであることです。この場合の対価とは、必ずしも金銭に限りません。たとえば土地の交換契約は対価の授受があるといえます。これに対し、贈与などは対価の授受がないとしています。 - 契約性
土地に関する権利の移転又は設定が契約により行われるものであることで、この場合における契約は、予約を含みます。これに対し、相続や時効取得により土地の所有権を取得した場合などは、契約によるものではないと考えられます。また、所有権移転請求権や、予約完結権の行使なども契約によるもの同様です。
土地売買等の契約の範囲について | |
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土地売買等の契約にあたるもの | 土地売買等の契約にあたらないもの |
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面積要件
届出が必要な「土地売買等の契約」の場合であっても、土地の面積が一定の面積に満たないときは届出不要にまります。
区域ごとの面積が以下に挙げる場合には、届出が必要になります。
国土利用計画法 事後届出 面積要件 | |
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市街化区域 | 2,000㎡以上 |
市街化調整区域 |
5,000㎡以上 |
都市計画区域外 |
10,000㎡以上 |
一団の土地
上記の面積未満の土地取引であっても、いくつかの土地を合わせた全体の面積が面積要件以上の場合には、事後届け出が必要になります。また、事後届出の場合、一団の土地であるかの判断は権利取得者について行います。
届出が不要となる例外
- 民事調停法による調停に基づく場合
- 当事者の一方又は双方が国等である場合
- 民事訴訟法による和解である場合
- 土地収用法のあつせんに基づく場合
- 農地法第3条の許可を受けることを要する場合
- 非常災害に際し必要な応急措置を講ずるために行われる場合(土地が所在する市町村の長の認定を受けている場合)
国土利用計画法 事後届出判断問断ロジックツリー
事後届出の手続き
土地売買等の契約をした権利取得者は、土地の利用目的、対価の額等を契約締結の日から起算して2週間以内に、市町村の長を経由して都道府県知事に届出をしなければなりません。この届出をしなかった場合には罰則があります(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)。ただし、契約が無効になることはありません。
都道府県知事は、権利取得者による事後届出があった場合、土地の利用目的について審査します。また、事後届出があった場合、土地の利用目的が土地利用基本計画等に適合しない場合などであるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、その届出をした者に対し、届出があった日から起算して3週間以内に土地の利用目的について必要な変更をするよう勧告することができます。
この勧告に従わなかった場合には、都道府県知事は、従わなかった旨と勧告の内容を公表することができます。
勧告に基づいて土地の利用目的が変更された場合で必要があるときはその土地に関する権利の処分についてあっせんその他の措置を講ずるよう努めなければなりません。
都道府県知事は、土地の利用目的に関し必要な助言をすることができます。助言にたいして従はなかったとしても罰則の適用はありません。また契約の有効です。
注視区域における事前届出
都道府県知事は、地価が一定の期間内に社会的経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇又は上昇するおそれがあるものとして一定の基準に該当し、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる区域を、5年以内の期間を定めて注視区域として指定することができます。
監視区域における事前届出
都道府県知事は、地価が急激に上昇又は上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域を、5年以内の期間を定めて監視区域として指定することができます。
事後届出と事前届出の比較
宅建試験では、事後届出についての問題が出題されることが比較的多いようです。
事後届出と事前届出は比較して覚えましょう。
事後届出 | 事前届出 | |
区域 | 全国どこでも | 注視区域、監視区域 |
届出の判断 | 土地売買等の契約にあたる場合(権利性、対価性、契約性にあたる場合) | |
面積要件 |
市街化区域:2000㎡以上 |
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届出義務者 | 権利取得者 | 契約の両当事者 |
届出期間 | 契約締結の日から起算して2週間以内 | 契約締結前 |
届出不要の例外 |
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届出先 | 市町村の長を経由して都道府県知事に届出 | |
届出をしなかった場合 | 6か月以下の懲役または100万円以下の罰金 | |
一団の土地の判断 | 権利取得者が取得した土地の合計で判断する |
契約の両当事者において判断する |
届出記載事項 | 土地の利用目的、対価の額等 | |
審査の対象 | 土地の利用目的 | 土地の利用目的、予定対価の額 |
勧告等 |
勧告、助言ができる。 |
勧告することができる。助言の制度はない。 |
勧告の時期 | 届出があった日から起算して3週間以内 | 届出があった日から起算して6週間以内 |
勧告の内容 |
土地の利用目的の変更について勧告できる。 |
について勧告できる。 |