民法‐制限行為能力者
- 建士先生
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行為能力とは、自分一人の判断で、法律行為(契約など)をすることができる能力をいいます。たとえば、不動産の契約などのことです。しかし、世の中には、この法律行為ができない(その判断能力に欠ける)人がいます。民法では、こういった人を『制限行為能力者』といいます。
この制限行為能力者は、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人に分けられ、この人たちが法定代理人、保佐人又は補助人の同意なしに行った法律行為を取り消すことができるようになっています。
ここでは、制限行為能力者についてまとめたいと思います。
もくじ
制限行為能力者
制限行為能力者の種類
- 未成年者
- 成年被後見人
- 被保佐人
- 被補助人
未成年者
未成年者とは、十八歳未満の人のことです。(民法第4条)
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意が必要です。
未成年者が法定代理人の同意を得て行った法律行為、又は、法定代理人が追認した法律行為は取り消すことができません。この法定代理人の権利を同意権又は追認権といいます。
未成年者の法定代理人の権利には、同意権、追認権の他に、同意をしていない法律行為を取り消す取消権と、未成年者に代わって代理行為をする代理権があります。
また、未成年者は、単に権利を得ること(無償で何かを得ることなど)、又は、義務を免れる法律行為(借金などの債務を免れることなど)については法定代理人の同意を得ずに行えます。
- みーこ助手
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民法第753条の「婚姻をすることで二十歳未満の人でも成年に達したとみなされ、この場合に行った法律行為は未成年者だからといって取り消すことができない」という条文は、2018年の改正より、成人年齢が18歳に引き下げられたため、婚姻適齢が男女とも18歳に改正されたものが2022年4月1日に施行され、2022年4月1日から2024年3月30日までの期間にこの条文が適用されるのは女性のみとなり、2024年3月31日にこの条文は削除となります。
法定代理人とは
法定代理人とは、法律により代理権を有することを定められた者をいいます。
未成年者には親権者(親権者がいない場合は未成年後見人)、成年被後見人には成年後見人という法定代理人が付与されます。また代理権付与の審判がなされた保佐人、補助人も法定代理人となります。
『民法-代理』
その他にも、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産(たとえば、参考書を買うために与えたお金)はその目的の範囲において未成年者が自由に処分することができます。
また、目的を定めないで処分を許した財産(お小遣いやお年玉など)についても同様に未成年者が自由に処分することができます。
未成年者の営業の許可
法定代理人から営業を行う許可を受けた未成年者は、その営業に関して成年者と同一の行為能力を有します。
その営業に関して、いちいち法定代理人に許可を受けなくてもよいということです。
また、未成年者が営業に堪えることができない事由があるときは、その許可を取り消したり制限したりすることができます。(民法第4条・第5条・第6条 )
成年被後見人
成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などの請求により後見開始の審判を受けた者の事をいいます。この場合の法定代理人を成年後見人といいます。
未成年や被保佐人の法律行為は法定代理人の同意がある場合、その法律行為は取り消すことができませんでしたが、成年被後見人の法律行為は、法定代理人の同意があってした法律行為についても取り消すことができます。
成年後見人は、取消権、追認権、代理権の権利を有します。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については成年被後見人にもできることになっています(取り消すことができません)。
(民法第7条・第8条・第9条・第10条 )
- ゆい
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成年被後見人の人も普通の日用品などの買い物は取り消すことができないんだね。
被保佐人
被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などの請求により保佐開始の審判を受けた者の事をいいます。この場合、保佐人を付します。
被保佐人は以下の法律行為を行う場合、保佐人の同意が必要です。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については同意不要です。
保佐人の同意が必要な行為等
- 元本を領収し、又は利用すること。(借金を返済してもらうこと)
- 借財又は保証をすること。 (借金や保証人になること)
- 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。(不動産等の財産の売却)
- 訴訟行為をすること。
- 贈与、和解又は仲裁合意
- 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
- 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
- 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
- 第六百二条 に定める期間を超える賃貸借をすること。(土地は5年、建物は3年、動産は6か月)
上記の規定する法律行為について以外でも、保佐人の請求により家庭裁判所は保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができるとしています。
また、逆に保佐人の同意がなければならない行為であっても、家庭裁判所は被保佐人の請求により保佐人の同意に代わる許可を与えるとこができるとしています。
保佐人の同意、又は同意に代わる許可を得ないでした法律行為は取り消すことができます。
(民法第11条・第12条・第13条・第14条 )
- 建士先生
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被保佐人の法律行為は、ほとんどの場合単独でできます。ただし、重要な行為については保佐人の同意が必要になります。
宅建試験では、不動産の取引、不動産の賃貸借についての問題がでますので覚えておきましょう。
被補助人
被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者について、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などの請求により補助開始の審判を受けた者の事をいいます。この場合、補助人を付します。
補助開始の審判の請求が本人以外からの場合、本人の同意がなければなりません。
被補助人は、成年被後見人や被保佐人と比べ不十分であるけれど判断能力があるため、本人の意思を尊重するため本人の同意が必要としています。
また、補助開始の審判をすると同時に、補助人の同意を要する審判もしなければなりません。その同意を得なければならないものとすることができる行為は被保佐人の同意を要する行為の一部としています。
補助人の同意がなければならない行為であっても、家庭裁判所は被補助人の請求により補助人の同意に代わる許可を与えるとこができるとしています。
補助人の同意、又は同意に代わる許可を得ないでした法律行為は取り消すことができます。
(民法第15条・第16条・第17条・第18条 )
制限行為能力者の相手方の催告権
制限行為能力者の相手方は勧告権を有します。
- 建士先生
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勧告権とは
制限行為能力者と取引をした人は、いつ取引を取り消されるか分かりません。そのため、追認するかどうかを勧告することができます。
制限行為能力者の相手方は1か月以上の期間を定め、制限行為能力者の法定代理人、保佐人又は補助人に対し追認するかどうか勧告することができます。もし期限までに確答がない場合、制限行為能力者が行った行為は追認したものとみなされます。
また、制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は被補助人に対して、1か月以上の期間を定め、保佐人又は補助人の追認を得るように勧告することができます。
この場合、期限までに確答がない場合はその行為を取り消したものとみなします。 (民法第20条 )
- ゆい
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誰に追認するかどうかを勧告するがで、追認したか取り消したとみなされるかが決まるんですね。
法定追認(民法第125条 )
追認したと確答しない場合でも、以下の行為をすることで追認したとみなされます。
- 全部又は一部の履行
- 履行の請求
- 更改
- 担保の供与
- 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
- 強制執行
制限行為能力者の詐術
詐術とは、「うそ」のことです。制限行為能力者が自分を行為能力者だと偽ってした法律行為は取り消すことができません。(民法第21条 )
- ゆい
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法律で保護されているからと言っても嘘をついてやった行為は取り消すことができないんですね。
制限行為能力者と第三者との関係
制限行為能力者が行った契約の取り消しは悪意、善意無過失の第三者に対して対抗できます。
制限行為能力者は、第三者が、悪意(事実を知らなかった)でも善意(事実を知っていた)でも、さらに、善意無過失(事実を知ることについて過失がない)でも、対抗できます。また、第三者が所有権移転登記を得ていたとしても同じです。
悪意・善意・善意無過失、有過失について
悪意や善意という言葉は宅建試験のみならず、法律を学ぶ上でよく耳にする言葉です。
悪意と聞くと悪いことを考えているみたいに聞こえますが、法律用語では意味が違いますのでよく理解しましょう。
善意とは、ある事実を知らないということ、悪意とは、ある事実を知っているという意味です。
また、無過失については、注意していたが知りえることができなかったとき、有過失は注意していなかったため知ることができなかった場合に使います。
宅建試験では、善意無過失、過失があるなどの言葉が良く出てきますので、その意味をしっかり理解しておきましょう。
取消権の期間の期限
制限行為能力者が行った行為は制限行為能力者が行為能力者になって5年間行使しないときは時効によって消滅します。また、その行為を行ってから20年を経過したときも同じように時効によって消滅します。
制限行為能力者が行為能力者になると本人が追認することができるようになります。
制限行為能力者が行為能力者になるとは、未成年者が成年になること、又は後見開始の審判、保佐開始の審判又は補助開始の審判が取り消されることをいいます。
たとえば、未成年者が法定代理人の同意を得ずに行った法律行為を取り消すことができるのは、本人が成年になった時点から5年間行使しなければ、取消権は時効によって消滅するということです。(民法第126条 )
未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人のまとめ
未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の違い | |
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未成年者 | 18歳未満 |
成年被後見人 | 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者 |
被保佐人 | 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者 |
被補助人 | 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者 |
未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の取消権の違い | ||
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未成年者 | 原則 | 同意のない法律行為は取り消すことができる。 |
例外 | ただし、以下の場合は取り消すことができません。
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成年被後見人 | 原則 | 同意を得た行為であっても取り消すことができる。 |
例外 | 日用品の購入その他日常生活に関する行為については取り消すことができない。 | |
被保佐人 | 原則 | 単独で有効な法律行為をすることができる。(取り消せない) |
例外 | ただし、以下の場合は保佐人の同意が必要になります。(同意がない場合は取り消せる)
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被補助人 | 原則 | 単独で有効な法律行為をすることができる。(取り消せない) |
例外 | 同意を得ない(補助開始の審判と同じに行われる補助人の同意を要する審判で定められた)行為は取り消せる。 |
制限行為能力の問題では、成年被後見人の『同意を得た行為であっても取り消せる』ことが重要です。
また、被補助人の『補助人の同意を要する審判で定められた行為』についてのみ補助人の同意が必要だということも覚えておきたい知識です。