土地区画整理法
- 建士先生
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宅建試験では、土地区画整理法から必ず1問出題されています。土地区画整理法の内容はそんなに難しくはありません。覚えることが少し多いかもしれませが、しっかりと勉強して確実に得点しましょう。
もくじ
土地区画整理法とは
土地区画整理法とは、土地区画整理事業に関し、その施行者、施行方法、費用の負担等必要な事項を規定することにより、健全な市街地の造成を図り、公共の福祉の増進に資することを目的としています。
土地区画整理事業では、公共施設(道路、公園など)を新設したり、宅地の区画整理を行う事業のことです。宅地の区画整理を行う上では、一時的に土地の所有者に別の場所に移動してもらう必要があります。この仮に移動してもらう土地のことを仮換地といいます。
施行者
土地区画整理事業の施行者は以下のようなものがあります。
- 個人施行者
- 土地区画整理組合
- 区画整理会社
- 都道府県及び市町村
- 国土交通大臣
- 独立行政法人都市再生機構等
施行者に関しる宅建試験の問題では、細かい知識が問われることがあります。ただしすべてを理解しることは難しいので、キーワードで覚えておきましょう。
土地区画整理事業の施行者 | ||
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民間施行 |
個人施行者 |
宅地の所有者及び借地権者の同意を得た者は、1人または数人が共同で土地区画整理事業を施行することができる。 施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要。 |
土地区画整理組合 |
宅地の所有者及び借地権者は、7人以上が共同して、定款及び事業計画を定め、組合の設立することができる。 施行地区内の宅地の所有者及び借地権者のそれぞれの同意が必要。 施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要。 施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべて組合員となる。 土地区画整理事業に参加することを希望し、定款で定められたものは、参加組合員として、組合員となる。 |
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区画整理会社 |
宅地について所有権又は借地権を有する者を株主とする株式会社は、規準及び事業計画を定め土地区画整理事業を施行することができる。 施行地区の宅地について所有権又は借地権を有する者が、総株主の議決権の過半数を保有。 施行地区内の宅地の所有者及び借地権者のそれぞれの同意が必要。 施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要。 |
|
公的施工 |
都道府県及び市町村 |
都道府県又は市町村は、施行区域の土地について土地区画整理事業を施行することができる。 |
国土交通大臣 | 施行区域の土地について、国の利害に重大な関係がある場合、都道府県又は市町村に施行すべきことを指示することができる。 | |
その他 |
独立行政法都市再生機構として施行する土地画整理事業 地方住宅供給公社として施行する土地画整理事業 都市計画事業として施行する土地画整理事業 |
個人施行者
宅地の所有者及び借地権者の同意を得た者は、1人または数人が共同で、規準、規約及び事業計画を定めて、土地区画整理事業を施行することができます。また、施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要です。
事業の変更、廃止、終了
規準又は規約及び事業計画に変更があった場合も、施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要です。廃止、終了しようとする場合においても都道府県知事の認可が必要です。
個人施行の承継
個人施行者について相続、合併その他の一般承継があった場合には、その一般承継人が施行者となります。
土地区画整理組合
宅地の所有者及び借地権者は、7人以上が共同して、定款及び事業計画を定め、組合の設立することができます。この場合には、施行地区内の宅地の所有者及び借地権者のそれぞれの同意が必要です。
施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要です。
土地区画整理組合の組合員
施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべて組合員となります。ただし、借家人は組合員にはなれません。
施行地区内の宅地について組合員の有する所有権又は借地権を承継した場合、組合に対して有する権利義務は、その承継人に移転します。
土地区画整理事業に参加することを希望し、定款で定められたものは、参加組合員として、組合員となります。
役員・役員の職務
組合には役員として、理事及び監事を置くことになっています。また組合の業務は理事の過半数で決定します。(定款で別段の定めがある場合を除く)
経費の賦課徴収
組合は、その事業に要する経費に充てるため、賦課金として参加組合員以外の組合員に対して金銭を賦課徴収することができます。参加組合員以外の組合員とは、すべての組合員(施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者)のことです。
賦課金の額は、組合員が施行地区内に有する宅地又は借地の位置、地積等を考慮して公平に定められます。また、組合員が組合に対して何らかの債権を持っていたとしても、賦課金の納付について、相殺をもって組合に対抗することがでません。賦課金の納付を怠つた場合、過怠金を課することがでます。
施行地区内の宅地について組合員の有する所有権又は借地権を承継した場合、その承継人も賦課金の納付義務を負います。
土地区画整理組合の解散
組合は土地区画整理事業が完成する前であっても、総会の議決を経て解散することができます。この場合、解散について都道府県知事の認可(施行地区を管轄する市町村長を経由して)が必要です。また、その組合に借入金があるときは、その解散についてその債権者の同意を得なければなりません。
その他
- 組合は法人格とします。
- 組合は、その名称中に土地区画整理組合という文字を用いなければなりません。また、組合でない者は、その名称中に土地区画整理組合という文字を用いてはいけません。
- 理事は監事と、監事は理事又は組合の職員と兼ねてはならない。
- 組合は、その事業を行うため必要がある場合においては、借入金を借り入れることができる。
区画整理会社
宅地について所有権又は借地権を有する者を株主とする株式会社は、規準及び事業計画を定め土地区画整理事業を施行することができます。
施行地区の宅地について所有権又は借地権を有する者が、総株主の議決権の過半数を保有していなければならず、施行地区内の宅地の所有者及び借地権者のそれぞれの同意が必要です。
施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要。
規準又は事業計画の変更、廃止、終了
規準又は事業計画に変更があった場合、施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要です。廃止、終了しようとする場合においても都道府県知事の認可が必要です。
土地区画整理事業の実施
土地区画整理事業では、区画整理されていない土地について、道路や公園などの公共施設を設置して、区画を整えます。
土地区画整理事業は減歩や換地という手法で行われます。
土地区画整理事業では、区画整理前の土地を従前の宅地といい、事業が完了した後の宅地を換地といいます。また、事業が完了したことを宅地の所有者及び借地権者に通知することを換地処分といいます。
土地区画整理事業では、施行費用などを捻出するために、換地を定めずに取っておく土地を保留地といいます。
換地計画
換地計画とは、従前の宅地と区画整理後の土地をどのように移動させるかを決めるプランのことです。
施行者は必ず換地計画を定めるものとされており、次の事項を定めることになっています。
- 換地設計
- 各筆換地明細
- 各筆各権利別清算金明細
- 保留地その他の特別の定めをする土地の明細
また、換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければなりません。
特別の宅地に関する措置
公共施設や、鉄道、学校、病院など、その他公共の用に供する施設などにおいては、、その位置、地積等に特別の考慮を払い、換地を定めることができます。
清算金
清算金とは、換地処分により不均衡が生しないように、土地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等を総合的に考慮して、金銭により清算のことをいいます。
たとえば、上記の図のEさんのように換地を定めない場合には、換地の代わりに清算金が支払われることになります。
保留地
土地区画整理事業の施行の費用に充てるため、又は規準、規約若しくは定款で定める目的のため、一定の土地を換地として定めないで、その土地を保留地として定めることができます。
換地計画の決定及び認可
換地計画を定める場合において、施行者が個人施行者、組合、区画整理会社、市町村又は機構等であるときは、その換地計画について施行地区を管轄する市町村長を経由して都道府県知事の認可が必要です。
建築行為等の制限
土地区画整理事業に関し認可があった後から、換地処分の公告がある日までの間では、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある次の挙げる行為をする場合には許可が必要です。
- 土地の形質の変更
- 建築物その他の工作物の新築、改築、増築
- 重量が5トンを超える移動の容易でない物件の設置、堆積
許可権者
建築行為等の制限 許可権者 | |
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国土交通大臣が施行する土地区画整理事業の場合 | 国土交通大臣の許可 |
その他の者が施行する土地区画整理事業の場合 | 都道府県知事の許可 |
市の区域内において個人施行者、組合若しくは区画整理会社が施行し、又は市が施行する土地区画整理事業の場合 | 市長の許可 |
国土交通大臣又は都道府県知事等は、違反者に対して原状回復や建築物の移転、除却を命ずることができます。
仮換地の指定
仮換地とは、土地区画整理事業において、公共施設の新設や宅地の区画整理を行う上で一時的にその工事を行うおうとする土地の所有者を別の場所に移動してもらうための土地のことです。換地処分までに土地の所有者が使用、収益ができる土地のことをいいます。
仮換地の指定は、その仮換地となる土地の所有者及び従前の宅地の所有者に対し、仮換地の位置、地積、仮換地の指定の効力発生の日を通知して行います。
また、通知をする場合に、仮換地となるべき土地について地上権、永小作権、賃借権その他の土地を使用し、又は収益することができる権利を有する者があるときは、これらの者に仮換地の位置及び地積並びに仮換地の指定の効力発生の日を、従前の宅地についてこれらの権利を有する者があるときは、これらの者にその宅地に対する仮換地となるべき土地について定められる仮にこれらの権利の目的となるべき宅地又はその部分及び仮換地の指定の効力発生の日を通知しなければりません。
仮換地の指定条件
仮換地の指定条件 | |
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個人施行者 | 従前の宅地の所有者と仮換地となるべき宅地の所有者等の同意が必要 |
組合 | 総会若しくはその部会又は総代会の同意が必要 |
区画整理会社 | 所有権を有するすべての者と借地権を有するすべての者のそれぞれの3分の2以上の同意が必要 |
公的施工 | 土地区画整理審議会の意見を聴かなければならない |
仮換地の指定の効果
仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで、仮換地又は仮換地について仮に使用し、若しくは収益することができる権利の目的となるべき宅地若しくはその部分について、従前の宅地について有する権利の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができるものとし、従前の宅地については、使用し、又は収益することができません。意味が分かりません!
図を見てください。まず、土地区画整理事業により、区画整理の邪魔にならないように、Aさんは従前の宅地から仮換地に移動することになります。仮換地に移動して使用収益をすることができるのですが、この時Aさんの土地の所有権は従前の宅地にあります。区画整理が行われ、換地処分があると、Aさんは換地において使用収益をすることができるようになります。この時に、Aさんの所有権も換地に移転することになるのです。
仮換地指定の効力 | |||
---|---|---|---|
仮換地の指定前 | 仮換地の指定後 | 換地処分後 | |
従前の宅地 |
使用収益ができる。 |
使用収益はできない。 |
使用収益はできない。 |
仮換地 | 仮換地指定前には仮換地において使用収益権はない。 |
使用収益ができる。 |
使用収益ができる。 |
仮換地を指定した場合に、その仮換地に使用、収益の障害となる物件があるときは、その仮換地の指定の日とは別に使用、収益を開始する日を定めることができます。
仮換地の指定をしたけれどもそこに物件があって、取り壊したりするために、仮換地の指定の日と使用収益することができるようになる日がずれてしまうことがあるということです。
使用収益の停止
換地計画において換地を定めない宅地の所有者(Eさん)に対して、期日を定めて、その期日からその宅地について使用、収益することを停止させることができます。
また、使用、収益することができる者がなくなった従前の宅地は、換地処分の公告がある日までは、施行者が管理することになります。
換地処分
換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後において、遅滞なく、しなければならなりません。ただし、規準、規約、定款又は施行規程に別段の定めがある場合においては、換地計画に係る区域の全部について工事が完了する以前においても換地処分をすることができます。
換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知して行います。
その後、個人施行者、組合、区画整理会社、市町村又は機構等は、換地処分をした場合においては、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届出なければなりません。
国土交通大臣、都道府県知事は、換地処分をした場合においては、公告しなければならなりません。
換地処分の効果
換地処分の公告があった日の終了した時 | 換地処分の公告があった日の翌日 | |
換地計画において定められた換地は従前の宅地とみなされる | ○ | |
換地計画において換地を定めなかった従前の宅地について存する権利の消滅 | ○ | |
仮換地指定の効力の消滅 | ○ | |
行使する利益がなくなった地役権の消滅 | ○ | |
換地計画において定められた清算金の確定 | ○ | |
施行者による保留地の取得 | ○ | |
設置された公共施設は原則として市町村が管理 | ○ |
行使する利益がなくなった地役権の消滅
地役権とは、土地の利便のために他人の土地を利用する権利のことです。たとえば、通行地役権の場合、土地区画整理事業の施行前では、道路に出るのに他人の土地を利用していた人が、新しく道路ができたために他人の土地を通行することなく道路に出られるようになった場合、その通行地役権は消滅します。換地処分の公告があった日の終了した時に、行使する利益がなくなった地役権が消滅するということです。
設置された公共施設
土地区画整理事業の施行で新たに設置された公共施設(道路や公園など)は、原則として、換地処分の公告があった日の翌日に、市町村が管理することになります。
換地処分に伴う登記
施行者は、換地処分の公告があった場合においては、直ちに、その旨を換地計画に係る区域を管轄する登記所に通知しなければなりません。
また、施行者は、換地処分の公告があった場合において、施行地区内の土地、建物について土地区画整理事業の施行により変動があったときは、遅滞なく、その変動に係る登記を申請し、又は嘱託しなければなりません。
ことばの説明 登記を嘱託する
登記を嘱託(しょくたく)するとは、官庁又は公署による登記申請のことをいいます。
国や地方公共団体が登記権利者となって権利に関する登記をするときは、官庁又は公署が登記申請することになっています。
不動産登記法第116条
(官庁又は公署の嘱託による登記)
第百十六条 国又は地方公共団体が登記権利者となって権利に関する登記をするときは、官庁又は公署は、遅滞なく、登記義務者の承諾を得て、当該登記を登記所に嘱託しなければならない。
2 国又は地方公共団体が登記義務者となる権利に関する登記について登記権利者の請求があったときは、官庁又は公署は、遅滞なく、当該登記を登記所に嘱託しなければならない。
換地処分の公告があった日後においては、施行地区内の土地及び建物に関しては、変動に係る登記がされるまでは、他の登記をすることができません。