民法‐物権変動
- 建士先生
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ここでは物権変動について勉強します。それでは物権の変動とはどういうことなのでしょうか。
物権とは、物に関する権利のことです。たとえば所有権だったり抵当権といったものです。
たとえば所有権がAからBに移転するのはいつでしょうか?契約書にサインしたとき?
もくじ
物権変動の時期
物権の移転は当事者がその意思表示をしたときに効力が生じます。
たとえば、Aが自分の所有する建物をBに売る場合、Aが「売ります」、Bが「買います」と意思表示をしたとき(口約束で売買の意思表示をしたとき)に移転するということです。契約書などはいらないってことになります。
(物権の設定及び移転)
第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
- みーこ助手
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原則として、不動産の場合であっても、意思表示だけで効力が生じます。
例えば、前の持ち主Aが登記を持っていて、今の持ち主(売主)Bから不動産をCが買った場合、CはAに自分の物だと主張することができます。
でも、Bが別の買主Dにもその不動産を売る意思表示をしていたら・・・。その時は先に登記をした方が勝ちとなります。
登記は物権が移転したときに必ずしなければならないわけではないのです。登記をしなくても、当事者が意思表示すればその効力を生じるためです。
物権変動の対抗要件
- 建士先生
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不動産の所有権の取得があった場合(物権変動)には、登記をしなければ第三者に対抗することができません。と言われても、初めて勉強する人には分かりづらいかもしれませんが、物権変動の問題では、この対抗要件がよく出ます。Bが勝つとか第三者Cが勝つとか。
それでは、例を挙げて考えてみましょう。
Aは自分の所有している建物をBに売却しました。そのあとすぐにCにも売却してしまいました。この場合、建物を取得する権利があるのはBでしょうか、それともCでしょうか?
上記の問題では、最初にBが建物を買う意思表示をしているので、Bが所有権を取得しそうですが、この場合は、どちらも所有権を主張することができません。
民法では、先に登記をした方が勝ちになります。
- ゆい
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不動産の場合、登記をしないと自分の物と主張することができないんですね。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
どちらが先に売買の意思表示をしたかではなく、登記を先にした方が勝ちになるので、上記の問題では、まだどちらも登記をしていないので、どちらも所有権を主張することができません。
仮に、Cが先に登記を備えた場合、どんなにBが「自分の方が先にAと売買契約を締結した」と言ってもCが所有権を取得します。
第三者とは?第三者の範囲
それでは、第三者とはどんな人のことでしょうか。また、第三者と認められない人はどんな人でしょうか。
第三者の範囲 | |
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第三者にあたる者 |
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第三者にあたらない者 |
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それでは、大事な項目だけご説明します。
第三者にあたる者
二重譲渡
二重譲渡とは、先に例を挙げた通り、AがBとCの二重に譲渡した場合です。この場合は登記を先にした方が勝ちになります。
抵当権者
買主と抵当権者との関係は二重譲渡と同様に考えます。買主の所有権登記と抵当権者の抵当権の設定では、先に登記をした方が勝ちになります。
不動産の賃借人
買主と不動産の賃借人(引き渡しを受けて適法に占有している賃借人)との関係では、買主が勝つためには登記を備えなければなりません。
たとえば、賃借人のいる不動産を取得した買主はその登記をしなければ、賃借人に賃貸人だと主張することができません。
次は第三者にあたらない者
無権利者
無権利者とは、権利書を偽造したり、盗んだりした者のような権利がない者のことです。
不法占拠者・不法行為者
たとえば、不動産を購入したときに、その不動産に不法占拠者がいた場合には、登記がなくてもその不法占拠者に対抗することができます。出ていけといえるのです。
転々移転の前主
たとえば、不動産の売買がAからBへ、その後BからCへ購入された場合。Cから見てAのことを前主と言います。このような場合には、Cから見てAは第三者にあたらないため、Cは登記を備えていなくてもAに所有権を主張することができます。
背信的悪意者
背信的悪意者とは、故意に害を与えるなど悪質な者のことです。たとえば、買主が登記をしていないことをいいことに高く売りつける目的でBより先に所有権移転登記を得る場合などです。こういった人は第三者とは言えません。
- 建士先生
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それでは、その背信的悪意者から買い受けた場合はどうなるでしょうか?
背信的悪意者からの転得者は善意悪意に関わらずまた、背信的悪意者でないかぎり保護されます。
他人のために登記を申請する義務がある者
他人のために登記を申請する義務がある者とは、たとえば、Aの所有する不動産をBが購入したとします。
BはCに登記の申請の代理権を与えて登記をしてもらう場合、Cが自分の不動産として登記してしまった場合には、Cは第三者にあたらないため、BはCに対して所有権を主張することができます。
買主と背信的悪意者からの転得者
A所有の不動産をBが買い受けたあとに、背信的悪意者CがAから二重に買い受けました。その後Cは善意のDにその不動産を売却しました。(Dのことを転得者といいます)この場合、BはDに所有権を主張することができるでしょうか。
答えは、Bは登記がなければ善意のD(Dは背信的悪意者ではない)に対抗することができません。先に登記をした方が勝ちになります。
取消し・解除・時効完成と第三者との関係
宅建試験ではこの取消し・解除・時効完成と第三者との関係がよく出題されています。
たとえば取消後の第三者なのか、取消前の第三者なのかで結果が変わってくるからです。
詐欺、強迫による取消し
詐欺、強迫による取消前の第三者との関係
たとえば、A所有の土地をBに売却し、BはCにその土地を売却しました。その後、AはBの詐欺によりABの売買契約を取り消しました。この場合CはAに対して所有権を主張することができるでしょうか。
この場合、Cは善意であれば登記を備えていなくてもAに勝ちます。Cが悪意ならAの勝ち。
強迫の場合は善意の第三者に対抗することができます。Cの善意悪意は関係なくAの勝ちです。
詐欺、強迫による取消後の第三者との関係
それでは、次のような場合はどうでしょう。
A所有の土地をBに売却しました。AはBの詐欺によりAB間の売買契約を取り消しました。その後BはCにその土地を売却しました。
この場合、取消しをした者Aと第三者Cとでは、先に登記を得た方が勝ちになります。
詐欺・強迫による取消し 第三者との関係 | |
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取消前の第三者との関係 | 取消後の第三者との関係 |
詐欺による取消しは善意の第三者に対抗することができない 強迫による取消しは善意の第三者に対抗することができる |
先に登記をした方が勝つ |
債務不履行による解除
債務不履行による解除前の第三者との関係
たとえばA所有の土地をBに売却し、BはCにその土地を売却しました。その後Aは債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除しました。この場合CはAに対して所有権を主張することができるでしょうか。
この場合、Cは登記を備えていなければAに勝つことができません。Cの善意悪意は関係ありません。
債務不履行による解除後の第三者との関係
それでは、次のような場合はどうでしょう。
A所有の土地をBに売却しました。AはBの債務不履行によりAB間の売買契約を解除しました。その後BはCにその土地を売却しました。
この場合、取消しをした者Aと第三者Cとでは、先に登記を得た方が勝ちになります。
債務不履行による解除 第三者との関係 | |
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取消前の第三者との関係 | 取消後の第三者との関係 |
先に登記をした方が勝つ |
先に登記をした方が勝つ |
時効完成
時効完成前の第三者との関係
たとえば、A所有の土地の時効の進行中(Bが占有している)にAがCに土地を売渡し、その後Bが時効取得した場合には、Bは登記がなくても第三者Cに所有権を主張することができます。
時効完成後の第三者との関係
時効完成前と違い、時効完成後では、登記をしなければ、第三者Cに対抗することができません。
この場合は、Aを基準にBとCが二重譲渡の関係と同じような状態になるからです。
時効完成 第三者との関係 | |
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時効完成前の第三者との関係 | 時効完成後の第三者との関係 |
登記がなくても時効による取得を主張できる |
先に登記をした方が勝つ |
物件変動の問題は、第三者との関係、登記についてなど複雑な問題が多く出題されます。とてもややこしいですが、しっかり理解しておきましょう。
また、第三者からの転得者についても自身で調べて知識をアップデートすることをお勧めします。
近年、宅建試験は複雑な問題が出題されています。どんな問題が出ても解けるようしっかり備えておきましょう。