平成22年宅建過去問 問7
- Z 平成22年度宅建過去問
- a 民法
- b 抵当権, 不法占有者, 債権者代位権
【問 7】民法第423条第1項は、「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。」と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 債務者が既に自ら権利を行使しているときでも、債権者は、自己の債権を保全するため、民法第423条に基づく債権者代位権を行使することができる場合がある。
- 未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、当該建物の所有権保全登記手続を行うことができる場合がある。
- 建物の賃借人は、賃貸人(建物所有者)に対し使用収益を求める債権を保全するため、賃貸人に代位して、当該建物の不法占有者に対し当該建物を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
- 抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使して、当該不動産の不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
平成22年宅建過去問 問7のポイント
平成22年宅建過去問 問7の選択肢1の解説
債務者が既に自ら権利を行使しているとき債権者は債権者代位権を行使することができません。
たとえば、債権者Aが債務者Bに1,000万円の債権を有している場合で、債務者Bは現金等の財産を有していないがCに対して1,000万円の債権を有している場合のことを考えてみましょう。
AはBから1,000万円を返してもらう代わりにCから1,000万円を取り立てることができます。これを債権者代位権といいます。
本肢の場合はすでにBはCに対して権利を行使しているため、Aは二重に債権者代位権を使ってCに対して権利を主張することができないのです。よって誤り。
平成22年宅建過去問 問7の選択肢2の解説
そもそも、所有権保存登記がなされていない場合、所有権移転登記ができません。
たとえば建物が新築した場合、建物所有者は1か月以内に表題登記を行わなくてはなりません。
この建物登記によって登記記録が作成され、表題部に記録されます。
この時点で所有者は表題登記に記載された人になるのです。
その後、権利部に所有権保存登記がなされます。この所有権保存登記をすることで所有者に対抗要件が備わり、売買や相続といった所有権の移転や抵当権の設定などができるようになります。
本肢では、この所有権保存登記がされていない建物を買い受けています。そのため、このままでは所有権移転登記ができない状態です。買い主は所有権移転登記請求権を保全するために、売り主に代わり所有権保存登記を申請することができるということになります。よって正しい。
平成22年宅建過去問 問7の選択肢3の解説
建物の賃借人は、賃貸人(建物所有者)に対し使用収益を求める債権を保全するため、賃貸人に代位して、当該建物の不法占有者に対し当該建物を直接自己に明け渡すよう請求できます。
不法占有者がいると賃借人は建物を使用することができません。そのため、賃借人は賃貸人が有する明渡請求権を行使して不法占有者を立ちぬかせることができるのです。よって正しい。
平成22年宅建過去問 問7の選択肢4の解説
不法占有者の存在により、競売価格が下落したり、競売そのものの進行が妨げられるといったことがあると、抵当権者にとって非常に問題になってしまいます。
そのため、抵当権者は抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使することができるのです。よって正しい。
民法第423条 債権者代位権